スーパービジョンの準備 — 逐語録・ケース資料の作り方(公認心理師/臨床心理士)
スーパービジョン逐語録準備とは
スーパービジョン逐語録準備とは、面接場面を検討できるように、匿名化したケース概要、相談したい論点、発言の逐語録または場面抜粋を事前に整える作業です。単に録音を文字にするだけでなく、「何を見てもらいたいのか」を明確にしておくことで、限られたSV時間を臨床判断や関係性の検討に使いやすくなります。
守秘義務のある実践では、録音、文字起こし、資料共有のそれぞれに注意が必要です。音声データを扱う前に、カウンセリング記録と守秘義務、録音同意の文面は録音同意書テンプレートを確認してください。
ケース資料の基本構成
| 項目 | 内容 | 書き方の注意 |
|---|---|---|
| 匿名化情報 | 年代、性別、職業カテゴリ、家族構成の概要 | 本人が特定される固有情報は避ける |
| 相談経緯 | 来談理由、紹介経路、面接回数 | 事実と解釈を分ける |
| 主訴・目標 | 本人の言葉、支援者が捉えた課題 | 本人の表現をできるだけ残す |
| 検討場面 | 逐語録、沈黙、感情が動いた箇所 | 前後の文脈を添える |
| 相談したい論点 | 見立て、関わり方、境界設定、次回方針 | 質問を1〜3個に絞る |
逐語録・ケース資料テンプレート
【スーパービジョン用ケース資料】 1. ケース概要 年代・属性: 相談経緯: 面接回数: 主訴(本人の言葉): 2. 現在の見立て 支援者が捉えている課題: 関係性・面接内で起きていること: 迷っている点: 3. 検討したい場面 場面の前提: CL1: TH1: CL2: TH2: 4. 自分の振り返り その時の意図: うまく扱えなかった点: 次回の方針案: 5. SVで相談したいこと ・ ・
逐語録は「全部」より「論点に合う場面」
初心者ほど全文逐語を持って行きたくなりますが、SVの時間は限られます。全文が有効な場合もありますが、検討したい論点がはっきりしているなら、場面抜粋の方が話が進みます。たとえば、沈黙が長くなった場面、助言したくなった場面、支援者が焦った場面、クライエントの語りが急に変わった場面を選びます。
逐語録の形式は、心理領域ではTH/CL、Co/Cl、面接者/相談者など現場によって異なります。大切なのは表記の名前ではなく、話者、発言順、沈黙、非言語情報、支援者の内的反応を後から追えることです。基本的な整え方は逐語録の作り方も参照してください。
匿名化と保管の実務
匿名化では、氏名だけでなく、勤務先、学校名、地域、固有の日時、珍しい職歴、家族構成など、組み合わせると本人が分かる情報も落とします。資料を共有する場合は、ファイル名にも氏名や施設名を入れない方が扱いやすいです。
録音から文字起こしを作る場合は、どのツールが音声をどこで処理するかを確認します。ARIAは端末内処理のiPhoneアプリで、無料枠では録音・文字起こし・話者分離を利用できます。SV資料に転記する際は、逐語録の下書きとして使い、匿名化と内容確認は人が行ってください。
注: 本記事は一般的な実務情報であり、医療・心理支援・法律上の助言ではありません。個別ケースでは所属機関、職能団体、スーパーバイザーの指示に従ってください。
SV前日のチェックリスト
- ケース資料から氏名、勤務先、学校名、地域、日付などの固有情報を外したか
- 逐語録の場面を選んだ理由を一文で説明できるか
- 自分の見立てと、まだ迷っている点を分けて書いたか
- スーパーバイザーに聞きたいことを1〜3個に絞ったか
- 資料の共有方法、保存期間、終了後の削除方法を確認したか
SV資料は、よく見せるための報告書ではありません。支援者がどこで迷い、何を見落としている可能性があり、次回面接で何を試すのかを検討するための材料です。完成度よりも、論点が読めることを優先します。
また、資料を作り込みすぎると、面接中に起きた揺れや違和感が消えてしまうことがあります。整った要約だけでなく、支援者が言葉に詰まった箇所、言い直した箇所、相手の反応が変わった箇所を残すと、SVで検討できる材料が増えます。
よくある質問
Q. 録音そのものをSVに持参してもよいですか?
録音の扱いは、同意内容、所属機関の規程、SVの契約範囲によります。音声は個人識別性が高いため、逐語録や匿名化した抜粋で足りる場合は、音声共有を避ける運用も検討します。
Q. ケース資料はどれくらい詳しく書くべきですか?
SVで扱いたい論点に必要な範囲で十分です。生活史を広く書くより、今回の面接で検討したい判断に関係する情報を事実ベースで整理します。
Q. 自分の失敗だと思う場面を出してもよいですか?
むしろSVでは、迷った場面、言葉が出なかった場面、関係性が動いた場面が重要な材料になります。評価されるための資料ではなく、次の支援をよくするための資料として準備します。
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